法律相談・財務相談


法律・財務の相談に関してさまざまな事例をご紹介します。

支援事例6 解雇の有効と無効


「解雇の有効と無効」

担当コーディネーター:見田村勇磨

 

 従業員を雇用する経営者であれば、能力不足の労働者に対し、「辞めてほしい。」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。「お前は役に立たないから、明日から来なくてよい。クビだ!」と言えれば、どんなに楽だろうと思ったことはありませんか?

しかし、そう簡単ではないのです。逆の立場となれば、容易に理解して頂けると思います。労働者にとって、雇用契約は生活の基盤であり、経営者による容易な解雇が許されるならば、労働者にとって酷な結果となって、安心して働くことができません。

 そこで、裁判所は、不合理な解雇を権利の濫用として無効とする判断をして、妥当な解決を図ってきました。最高裁判例も「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用という無効になる」(最高裁昭和50年4月25日判決)と判示しています。このような考え方を解雇権濫用法理といます。

 現在、この解雇権濫用法理は、労働契約法16条において明文化され、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と明記されています。

そのため、「辞めてほしい。」と思っても、そう簡単には「クビだ!」とは言えないのです。「客観的に合理的な理由」があることを経営者の側で主張立証する必要があります。

 それでは、どの程度の能力不足であれば、解雇が認められるのでしょうか。

 労働者の能力不足が、解雇により労働者の生活基盤を奪うことになってもやむを得ないと考えられる程度のものかどうかがポイントになります。

 

解雇を有効にした裁判例と無効にした裁判例を、それぞれ一つずつ紹介したいと思います。

(1) 解雇を有効とした裁判例 東京地裁平成15年12月22日判決

 コンピューター技術者としての豊富な経験と高度の技術能力を有することを前提に、SEとして中途採用されたにもかかわらず、約8年間の同部門在籍中、日常業務に満足に従事できないばかりか、特に命じられた業務についても期待された結果を出せなかったうえ、直属の上司の指示に対し反抗的な態度を示し、その他の多くの課員とも意思疎通ができず、自己の能力不足による業績不振を他人の責任に転嫁する態度を示し、人事部門の監督と助力の下にやり直しの機会を与えられたにもかかわらず改善しなかった労働者に対する解雇が、技術・能力・適格性が著しく劣っていてその職務の遂行に支障を生じており、かつ、それは簡単に矯正することができない持続性を有する労働者の性向に起因しているものと認められるとして解雇を有効としました。

 

(2) 解雇を無効とした裁判例 大阪地裁平成14年3月22日判決

 成績不振の労働者に対する解雇につき、解雇4年前から主にC評価(標準よる劣る)との評価を受けその評価自体は不当なものとまではいえないとしながらも、①以前はおおむねB評価(標準)を受けていたこと、②営業職として勤務していた時期の成績不振は、後任者も予算を達成できなかったことや営業自体が不振であったことなども考慮すれば、一概に非難できないこと、③営業課での業務は、コンピューターを使っての大量の伝票処理を一人でやるというものであり、同労働者にとって慣れない業務であったことが容易に推認できること、④会社には本社物流課での業務のように、同労働者がミスなく業務を行うことができる職種もあること、⑤就業規則には、人事考課の著しく悪い者等については、降格も定められていることなどの事情を挙げて、解雇に値するほど技能発達の見込みがないとまではいえないとして解雇無効としました。

 

 これら二つの裁判例を比較してもわかるように、解雇が有効か無効かは、様々な事情の総合的な判断となります。しかも、経営者の側で解雇の客観的合理性を主張立証する責任があります。そのため、どんなに腹立たしいことがあっても、一時の感情に任せて「クビだ!」と言うのは、極めて危険です。違法な解雇であると認定されれば、損害賠償の義務を負うこととなります。問題社員を解雇したいと思う場合には、あらかじめ弁護士とよく相談して、後々の紛争を防止する方法を取りながら、解雇を実施する必要がありますので、十分に注意して下さい。


支援事例5 青色申告をご存知ですか?


「青色申告制度とは」

担当コーディネーター:小田切清子

 

 ご相談者様は、ご家族でCafeを始めたいとのご相談で来所されました。個人事業の場合の開業時の手続きとして、税務署等への開業の届出、給与支払事務所等の開設届出、源泉所得税に関する届出書などが必要となり、また、青色申告を希望される場合には青色申告承認申請書と青色事業専従者給与に関する届出書を開業届と一緒に提出していただくといいですよとアドバイスさせていただいたところ、青色申告って何ですかとのご質問に至りました。

<青色申告制度とは>

 青色申告制度とは、簡単にいうと、一定水準以上の記帳をしてその記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いを受けられますよという制度です。青色申告をするためには、事前に所轄税務署長の承認が必要となりますので、一定の期日までに承認申請書を提出しなくてはいけません。

<青色申告のメリットデメリット>

 青色申告のメリットはいくつかありますが、代表的なものとして、

① 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる

② 親族などへ給与を支払った場合に、青色事業専従者給与の必要経費算入が認められる

③ 純損失の繰り越しが3年間できる

 などが挙げられます。

 つまり、きちんとした帳簿を記帳して正しく申告することで、節税効果があるということが最大のメリットですね。

 ところで、青色申告のデメリットはないのでしょうか。デメリットを挙げるとするならば、会計ソフトなどの導入費用がかかる、簿記の知識の習得が必要となるなど、費用と手間がかかることでしょうか。ただし、現在は白色申告者に対しても、記帳制度や記録保存制度が設けられていますので、費用と手間がかかる点は青色申告者に限ったことではないようです。

 

 岐阜県よろず支援拠点では、創業に関する手続きや経理に関する疑問など、どんなことでもお気軽にご相談いただけます。どうぞご利用ください。

 


支援事例4 決算書と部門別損益計算書の重要性


「決算書と部門別損益計算書の重要性」

担当コーディネーター:井上 学

 

1.会社の概況を把握するための手段として決算書の重要性

 いつも相談を受ける際にはできるだけ会社の決算書を見せていただくようにしています。決算書、税務申告書等には現状の会社の状態を知る上で必要な情報が網羅されています。決算書はそれほど素晴らしい道具なのです。

 ところが、この有用な情報を活用されていない経営者の方が多い印象を受けます。有効活用するには前提として簿記の知識が必要です。

岐阜県よろず支援拠点では決算書の見方のミニセミナーを実施しますのでご活用ください。決算書の見方がわかると会社経営の各種施策の効果が決算書にどのように反映されるか理解できるようになります。

 

2.経営改善の手段として部門別損益計算書の重要性

 実は決算書だけでは十分でないのです。会社経営をより正確に把握するためには部門別損益計算書の作成が必要です。決算書は通常、会社全体の損益を表示します。しかし、会社の事業が複数の事業で構成されている場合には事業別の損益計算書がないと会社の状況を正確に把握できないのです。

 相談者の方にこんな事例がありました。決算書ではわずかに黒字の会社でした。ところが、A事業では黒字であるが、B事業では赤字であったのです。決算書だけを見ていても赤字の事業を把握できないのです。部門別損益計算を簡易的に作成したところ、B事業には売上が増加しても利益が出にくい構造的は問題があることが露呈しました。

岐阜県よろず支援拠点では、まず現況を徹底的に分析し、問題点を把握します。その後、経営者の方と共に改善策を立案し、計画を実践する過程をサポートさせていただきます。

 


支援事例3 取引において契約作成の重要性


「取引において契約作成の重要性」

担当コーディネーター:見田村 勇磨

 

 中小企業の代表者の方から相談を受けると、取引先の企業が、「当然やってくれるはずのこと」をやってくれない。何とかしてほしい。とのご相談を受けることがよくあります。

そこで、「当然やってくれるはずのこと」とは何かについて、詳しくお話しを伺うこととなります。そして、契約書を確認させて頂きます。しかし、多くの事例において、「当然やってくれるはずのこと」と主張されていることが、契約書に一切の記載がありません。それどころか、契約書すら存在しないことも多いです。

 自分が「当然やってくれるはずのこと」と思っていても、相手方にとっては、そうではないことは、往々にしてあります。また、何かの事情で気持ちにすれ違いが生じて、相手方が意地悪をして、いつもやってくれることでも、やってくれなくなってしまうこともあります。

 そのような場合、契約書に記載がないと、「当然やってくれるはずのこと」を「強制的にやらせる」ことは困難です。そのため、企業が取引を行う場合には、あらゆる紛争を想定して、未然に紛争を防止しながら、自社の利益を確保する戦略的な契約書を作成しておく必要があります。

 取引において、契約書の作成は大変重要なプロセスですので、弁護士の援助の下、適切に契約書を作成することを是非ともお勧めします。

 

 


支援事例2 法人設立のメリット・デメリット


「個人事業から法人設立のメリット・デメリット」

担当コーディネーター:小田切清子

 

よろず支援拠点では、「個人で事業をはじめたけれど、事業が軌道に乗って利益も増えてきたので、そろそろ法人を設立したい」との相談をお受けすることがあります。 

 今回のご相談も、この法人成りに関する相談でした。

 法人を設立したいがその場合にどんな手続きが必要になるのかを知りたい、とのことで来所されました。

ご相談者様は、節税効果を得たいというよりも、法人で運営していくことで対外的な信用力を高め、後に続く人たちが活動をしやすくなるようにしていきたいといったことが第一の目的でした。

 

法人化にはメリット・デメリットがあります。

<メリット>

◎所得が一定以上の場合には節税効果が得られる

◎対外的な信用力が高まる

◎決算月を自由に決められる など

 

<デメリット>

●法人の設立に費用がかかる

●運営事務や経理処理が複雑となるため手間と費用負担が増える

●社会保険への加入が必要となる など

 

 今回は、ご相談の中で、法人を設立すると社会保険の加入が必要になるということを初めて知り、それだと自分自身の社会保険の負担が大きく変わるのでもう一度再考しますとのことになりました。

ご相談者様には、知らない気づきを得ることができて、事前に相談して良かったとおっしゃっていただきました。

 法人成りをした方がよいのかどうかの判断は、まさにケースバイケースです。ご自身の場合はどうなのか、事前によくご検討をされることをお勧めします。

 

岐阜県よろず支援拠点では、専門家コーディネーターによる無料経営相談日を設けて、曜日ごとに法律・労務・税務・事業承継・Webに関して各分野の専門家が相談に応じています。事前予約の上、ぜひお気軽にご利用ください。

水曜 / 税務 担当:小田切コーディネーター

 


支援事例1 WEBを介した遠隔相談で法律相談


『専門家コーディネーターによる無料経営相談』

月曜/法律担当:見田村コーディネーター

 

岐阜県よろず支援拠点では、今年度からWebを使った遠隔相談を積極的に推進していきます。

月曜日は弁護士の見田村コーディネーターが産経センターオフィスに在席されています。

 

今回はwebを使い高山市にあります「高山サテライト相談窓口」から遠隔相談の様子をご紹介します。 

 

高山サテライトではスタッフが機材の準備を行いますので、訪問された相談者は画面に映る見田村コーディネーターへ話かけるだけです。

ヘッドホンとマイクも準備しておりますので、互いの通話はクリアに聞こえます。

 センターオフィスでは見田村コーディネーターがスタンバイし、ご相談に対応します(写真参照)

約30分の相談を終えたコーディネーターの感想は「今日の相談内容はWebでも十分対応できたが、複雑な相談だと厳しそうなので、事前に資料を送ってもらえば効率的だと思う」とのこと。

 

「相談はface to faceが基本ですが、100㎞以上離れていても専門家に相談できるのは魅力です」と付け加えられました。

さらに、数多くの対応を積み重ねノウハウを蓄積しながら相談者に満足していただける対応に繋げて参ります。

 

専門家相談は原則予約制です。スケジュールはコチラからご確認下さい。